フィードバックの力 −112 wordsにこもった思い−
フィードバックには、人の考えを広げたり、行動を変えるきっかけをつくったりする不思議な力があります。
この夏、Stanford LEAD Online Business Programで「Decision Making(意思決定)」のコースファシリテーターを務めました。コースファシリテーターとは、教授と生徒の媒介役として、コーチングセッションを行ったり、課題の提出物を添削したりする役割です。担当の生徒数は25名、グローバル企業やスタートアップで活躍するエグゼクティブが中心です。4回の課題に対して、一人ひとりにフィードバックをした数は100回となりました。
心がけているのは、単なる “ティーチング” にならないこと。間違いを指摘するだけでは深い学びにつながらないと思うからです。自分がこのプログラムの生徒だった時に、名ファシリテーターたちから教わったのは、誤りを指摘するのではなく、“良質な問い” として投げかけることでした。一見まわり道に思えるかもしれません。でも、考える時間を与えられたことで、自身の学びがぐっと深まった体験を何度もしました。
ときには耳の痛いことをあえて伝える場面もあります。無難な言葉を選べば相手との軋轢の心配はいらず、きっと楽でしょう。けれど、踏み込んだ意見を伝えてこそ、相手にとって新しい気づきを感じてもらえる、そう信じてこれまで取り組んできました。
学期の終わりには、毎回Evaluation(評価)のアンケートがあります。結果が出るまでの2週間は、正直そわそわします。そんな折、受け持ちの生徒から届いたメッセージがありました。
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Thank you so much Nakamura san ! (I have been tempted to address you this way, I am a huge admirer of Japan)
As always, I have looked forward to your lovely evaluations where I so much to learn. I am glad to have had you as my CF. Another fun fact is that your Spotlight Video was on of my inspirations to join this program.
Thank you for the lovely words, yes I was very eager and keenly interested in this course and the whole LEAD program in general. With this course, I am finishing the LEAD Program and can't wait to apply and reap the benefits of what I have learned.bb
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自分の思いが相手に届いていたと実感できる、最高に嬉しい瞬間でした。学期中は週末の多くの時間を費やすことになりますが、そんな言葉がいつも継続する力を与えてくれています。
メッセージに出てきた「Spotlight Video」は、2年前に学校の依頼で撮影した2分ほどのプロモーションビデオのことです。
2時間の収録を経て編集されたこの映像は、今も世界のどこかで誰かの目に触れています。そして、学びのやる気スイッチを押し、Stanfordのエグゼクティブプログラムの扉を叩くきっかけになっています。
だからこそ、これから出会う一人ひとりに向けて、どんな小さなフィードバックであっても丁寧に届けていきたい。そんな思いを、改めて心に刻んでいます。