人生を決めたのは、ランキングには載らない会社だった

時は平成6年、1994年。

大学の就職課の名簿を手に、公衆電話から一件ずつアポイントを取っていたあの頃。浅草橋の喫茶店で、とある会社の先輩と初めて会ったのが、今から31年前のことだ。

コーヒーを一口すする間もなく、開口一番こう言われた。

”うちの会社やめた方がいいと思うよ。”

面食らう僕に、先輩は続けた。

”もし会社に ”安定” を求めているなら、ね。”

自分はどうありたいのか?会社に何を求めて就職活動しているのか?

そんな問いを真正面からぶつけられたのは初めてで、逆にその会社への興味が強く湧いた。

話を聞けば、通信の規制緩和を追い風に生まれたばかりの国際電気通信サービス事業会社。設立8年目、社員数600名ほど。まだ無名に近い小さな会社だった。

それでも僕は、その出会いに背中を押され、入社を決めた。


今思えば、その選択こそが自分の社会人としての土台を築いたのだと心から思う。

母は心配で涙し、父は静かにうなずいてくれた。あのときの家族の姿は、今も忘れられない。

入社後は偶然にも先輩と同じ部署になり、以来31年間ずっと交流が続いている。最近では、経営者として世界を飛び回る彼と、サンフランシスコで6年ぶりに再会した。

大成した人はよく、”自分は運がよかった” と言う。

“タイミング、場所、人に恵まれた、と。”

Pennで出会った先輩も同じ言葉を口にした。

"I was so fortunate to be at the right place, at the right time, and with the right people."

きっとこれは、どの時代にも変わらない人生の本質なのだと思う。

僕にとっての転機は、まさに “ランキングには載らない会社” との出会いだった。

そして、今もう一度あの瞬間に戻れたとしても、きっと同じ道を選ぶだろう。

“自分はどうありたいか”

その問いを投げかけてくれた先輩に、今あらためて感謝を。

これから新たな道を歩み始める皆さんにも、自分を揺さぶるような出会いがありますように。

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